「ロボットスーツ②」

医療

静岡県

2011年5月7日(土)

 5月6日(金)更新  の続編です。ロボットスーツは、患者さんの回復を助けるだけでなく、理学療法士などの介護者の負担を軽減してくれます。テクノロジーと人間の絆を発見しました。

「希都菜の発見」~回復への最短距離を探るモーションキャプチャー~

「平衡機能測定中」

 中伊豆リハビリテーションセンターでは、リハビリの計画を立てたり、装具を作る前にモーションキャプチャーで患者さんの筋力の状態、体の傾きなどを記録、検査します。ゴルフや野球、テニスの選手がスイングを研究するためにモーションキャプチャーを使っているのを見たことはありますが、リハビリの世界でも利用できるのですね。

 これまでは、理学療法士が見た目で判断して、こんな感じかなと、経験に基づいて装具を作ったり、リハビリ計画を立てたりしていました。やってみては改善することを繰り返していたのですが、データをとることによって、これまで以上に、ひとりひとりの患者さんに合った的確な装具選びと、効率的なリハビリ計画が立てられるようになったのです。

 最長180日間という医療保険内での入院期間内に回復できることは、患者さんにとって、大きなメリットですね。

「きょうのナルホド」~人の可能性~

 ロボットスーツ は、テクノロジ-を追求しただけのものではありません。人の学習能力の可能性を最大限に引き出せるというところが、これまで私が見たことのある医療用ロボットとは違うところです。むちうちの首や、せきついの間を伸ばすのに使うけん引の機械も、筋力トレーニングのために足を自動的に上下させる機械も、動きは機械が主導で、そこに患者が身をゆだねるというものです。しかし、ロボットスーツは、装着している人が主導で、患者さんの“意思”によって動きます。足を上げるサポートをしてくれるだけでなく、患者さんが望む上がり具合を生体電気信号から感知、調整してサポートしてくれます。動きに無理が生じず、痛みがほとんど無いといいます。痛みがないと無理なくリハビリを続けられるので、本人のモチベーションを保つことができ、回復する期間の短縮にも影響しそうです。

「きょうのキズナ」~ロボットが理学療法士も助ける~

「野田さんのモーションキャプチャー」

「自分の歩き方の特徴を画面でチェック」

 モーションキャプチャーで撮影したデータを見ると、野田さんはやや前かがみで腰が引けています。健康な右足に頼って立っているため、骨盤が傾いています。これを元に、理学療法士の本島直之さんは、腰を前に出すような歩き方のサポートをロボットスーツでプログラムすれば、歩く際の後ろ足が伸び、次の一歩が大きく踏み出せると考えました。
 腰を支えることと、まひがある左足を持ちあげることをロボットスーツに任せて、本島さんは、骨盤の傾きや、うつむいてしまう頭を上げる“姿勢”をアドバイスすることができます。
 本島さんは、1人の患者さんのリハビリを担当するとき、何本も手がほしいと思うことがあると言います。腰、腕、足、傾き、ねじれなど様々な支えをしたいのですが、ロボットスーツがそのいくつかをサポートしてくれると、理学療法士はその他の部分をサポートし、患者さんの表情や様子に気を配れるようになったと話しておられました。
 検査データを分析し、ロボットスーツと連携させることで、理学療法士の経験値のみでリハビリを行っていた時よりも、リハビリ計画の改善点が明確にみえたり、より効果的な動きの訓練を考えたりすることができるようになるのですね。

「きょうのキズナ」~テクノロジーと人の一体化~

「開発者 山海嘉之さん」

 ロボットスーツの開発者で筑波大学教授の山海嘉之(さんかい・よしゆき)さんにお話をうかがってきました。リハビリをする患者さんだけでなく、より多くの方にロボットスーツを使ってもらえるようになってほしいとおしゃいます。車いす利用者は、エコノミークラス症候群になる心配があると言われていますが、ロボットスーツをつけて立ち上がるだけでも、少しは予防になるかもしれません。また、リハビリをする患者さんと医師が同時にロボットスーツを装着して、患者さん側の動きの情報をコンピューターを通じて医師側に送ることもできます。患者さんがどのように不自由を感じているのかを医師が同時に体験し、リハビリ計画に役立てることもできるそうです。

 山海さんには、人と技術を一体化させ、テクノロジーを健全な社会づくりに役立てたいという思いがあります。お話によると、科学者は、新しい技術を開発すると、さらに世の中の役に立ちたいと、次の新しい技術開発に乗り出すことが多いのですが、山海さんは、ロボットスーツをさらに進化させ、育てていきたいと考えておられます。ロボットスーツをもっと軽量化、簡易化できれば、日常的に自宅で使える日がくるかもしれません。人に反応したり、人のように動いたりするロボットの時代から、人の意思と共に動くロボットの時代がすでに始まっているのですね。ますます高齢化する社会で、日本の研究者が得意とするロボット、科学、テクノロジーが、地域や社会に貢献してくれるといいなと思います。

今回の取材協力先

CYBERDYNE株式会社 (サイバーダイン株式会社)  

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投稿者:平川 希都菜 |  投稿日時:2011年5月7日(土) 00:00

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