「買い物弱者(1)」
ノンジャンル
東京都
2011年8月23日(火)
日常生活の買い物に不便を強いられている、いわゆる“買い物弱者”が、社会問題になっています。人口の減少や大型店の参入などの影響を受けて、農村だけでなく、都会でも、地域の商店街や小売店が閉店を余儀なくされています。“買い物弱者”問題は、過疎地だけではなく、便利なはずの都会でも広がっているのです。
経済産業省は、平成22年12月に、『買い物弱者を支えていくために』というマニュアルを出し、官民が連携して対策をしていくことが重要だとしています。
“お客様目線”とは何かを徹底研究し、「半径500メートル圏内シェア100%」を目指す地域密着型百貨店が東京都大田区にあります。買う“場所”がないのではなく、買いたい“もの”がないという都会ならではの買い物弱者の解決策を見つけました。
「希都菜の感想」
ダイシン百貨店がある東京都大田区の山王商店街には、買い物をするスーパーも、めがね店や花屋もあります。どこが弱者なんだろう?と思いながらダイシン百貨店に入り、客層と品揃えを見て、ここが高齢者のよりどころだいうことがわかりました。昭和の始めころに人気だった雑貨や化粧品が揃っていることや、親しみ深くお客さんと話をしている店員が、地元の高齢者から愛されている現れだと感じました。
「希都菜のギモン?」~買い物弱者の悩みとは?~
買い物弱者というと、スーパーやお店が遠くて生活に困っている人というイメージなのですが、大都市では、“遠いこと”が問題ではないようです。農林水産省が平成23年8月に発表した『食料品アクセス問題の現状と対応方向』の11ページのデータによると、店までに急な坂道があること、階段があること、品揃え(欲しい物)が少ないことなどに不便を感じている人が多いことがわかります。地方都市では、商店までが遠いことや、買い物を手伝ってくれる人がいないことが課題のようです。また、農山村では買い物へ行くための公共交通機関が無いこと、あってもバス停が遠かったり、バス代が高いことが負担になっているという調査結果が出ています。買い物弱者は、一言でまとめられるものではなく、大型都市、地方都市、農山村それぞれで悩みが異なるのですね。
「ダイシン百貨店ですべてほしいものが揃うという女性」
足腰が弱っていたり、自動車を運転しない大都市の高齢者にとっては、広い店舗にテナントがいくつも入っている複合施設よりも、こぢんまりした店舗で何でも揃う店の方が便利なのだと、ビデオに出演してくださった女性が話しておられました。大田区は坂道が多く、高齢者が買い物に出てくることはできても、重い荷物を持って坂道を登って帰ることは困難です。そこで、ダイシン百貨店は、細い道にも入って行けるマイクロバスで送迎をし、重い荷物を持って帰るのは大変だというお客さんには、ペットボトル1本でもご自宅まで配達するサービスを始めたのです。大型都市の買い物弱者は、買い物サポートサービスが問題解決のポイントの一つなのですね。
「希都菜の発見」~お客様目線~
「ガーゼの寝巻き」
「タバコのヤニ取り」
「粉はみがき」
ダイシン百貨店には、カセットテープや粉歯磨き、ガーゼの寝巻きなどが置いてあります。私は初めて見る化粧水もありました。
ダイシン百貨店社長の西山敷(ひろし)さんは、著書『下町百貨店・ダイシンはなぜ、不況に強いのか』の中で――お客様にとっていちばんうれしいことは、売り場の効率がよいことなどではなく、自分の欲しいものが置いてあり、納得のゆくまで説明してもらえることです――と書いておられます。最新商品が消費者から求められているだろうと思って、新しいものばかりを並べるのではなく、売り場に立つ店員が、その売場に来るお客様の声を聞いて仕入れをしているのだそうです。
「ダイシン百貨店 代表取締役社長 西山敷(ひろし)さん」
--ダイシン百貨店の古さ、野暮ったさは、地元のお客様にとっての「安心感」であり、「温かさ」「ほかの百貨店が失ってしまった魅力」として認知されるようになったのです。--ともおっしゃっています。流通業界では注目されなくなった古い商品を置いていることが、お客様の満足につながているのです。お客様の目線に立つということは、店側が、お客様はこういうものが欲しいだろうと決めるのではなく、お客様の生の声にストレートに応える品揃えをすることが大切なのですね。
「きょうのキズナ」~世間話とコミュニケーションの場~
都内の百貨店では見られない世間話の風景は、ダイシン百貨店の特徴のひとつです。ビデオに登場していた女性のように、韓国ドラマの話をしたり、体調を気づかったりする会話が、店内のあちらこちらから聞こえてきます。ひと昔前の商店街の魚屋や八百屋の店頭のイメージです。西山さんのお話によると、毎日ダイシン百貨店に来られるお客様が160人ほどいらっしゃるそうです。営業している日は“毎日”です。お客様にとって、ダイシン百貨店は行きつけの店であり、店員との会話は日課なのですね。
西山さんは、「電気、水道、ガス、ダイシン」を目指しておられます。地域住民にとって、電気や水道と同じくらい、無くてはならない存在でありたいということです。お客様目線が発展して、商品配達のついでに、独居老人の見守りサービスをしたり、福祉団体と連携して配食サービスを始めたりしています。お客様を店に“集める”百貨店から、お客様のお宅へ“出向く”百貨店へと経営がひろがっています。そうして、社会の縁をつなげていきたいと考えておられるのです。
「きょうのキズナ」~行政も期待するインフラ拠点として~
大田区役所は、ダイシン百貨店をはじめ、大田区の高齢者の見守りサービスをする団体やNPOとともに、情報提供の協力体制を目指しています。配達や送迎、高齢者の集会などの中で、住民の変化に気づくことがあれば区役所に知らせてもらい、必要な行政サービスを受けられるよう、区役所が住民に声かけをするという仕組みです。
住民が多い都会では、区役所職員が、高齢者を1人1人訪ねて歩くことは難しく、マンションのセキュリティシステムがある場合は、個人宅を訪ねることもできないそうです。そのため、日々高齢者と接点があるダイシン百科店の声掛けや見守りが、高齢者の孤独死やひきこもり予防につながると、大田区福祉部の担当者は、ダイシン百貨店の存在に感謝しておられました。その他にも、大田区には、見守りネットワークのNPOや高齢者集会を行うボランティア団体が50ほどあり、区役所が、情報のとりまとめと発信をしています。
個々に行うサービスに留まらず、連携やつながりがますます大切な時代なのですね。買い物弱者の対策は、今後、地域の高齢者福祉対策の一端も担う重要な課題なのだと今回の取材を通じて感じました。買い物弱者の話題は、シリーズでお伝えする予定です。地域の規模や特徴に合わせた解決策をご紹介できるように取材したいと思います。


ダイシン百貨店の取り組みはすばらしいと思った。お店もお客もお互いに幸せになれる。
投稿者:zone | 投稿日時:2011年9月3日(土) 00:06
zoneさん、コメントありがとうございます。ダイシン百貨店にくるお客さんは、とても幸せそうです。私もおばあちゃんになったらこんな町にくらせるといいなと思います。
投稿者:希都菜 | 投稿日時:2011年9月19日(月) 00:45
生活が便利な都会でも「買い物弱者」がいることにとてもビックリ。都会の「買い物弱者」は、店までの「距離」が問題なのではなく、「坂が多い」ことや「品揃え」が問題なのだということを改めて知り、勉強になりました。また、百貨店が地域の見守りのハブになっていることも、とても新鮮でした。希都菜、いい取材だね。今度は是非、農村や離島の「買い物弱者」を取材して下さい。
投稿者:地行弘憲 | 投稿日時:2011年9月19日(月) 17:23
都会でも買い物するのに困っている人がいるとは...全然気がつかなかったな。イヤー、勉強になりました。これはいい企画だったと思います。これからも自分たちが気がつかないあっというような取材よろしくお願いします。
投稿者:車出 郷 | 投稿日時:2011年9月20日(火) 09:35
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