「えちぜん鉄道」
交通安全
福井県
2012年2月17日(金)
バスも鉄道も、地域の路線では今、存続のために各地で様々な取り組みが行われています。第三セクターが運営をしている地域が多いのですが、福井県に、第三セクターに加え鉄道利用者である沿線住民が株主として参加し、廃線から復活を遂げたローカル鉄道があります。雪が積もる冬期は、地域で唯一の交通手段となる「えちぜん鉄道」の取り組みを取材しました。
「希都菜の感想」
ローカル線の旅の取材に行ったことが何度かあって、今回ものどかな田園風景を想像していたのですが、ターミナル駅の「福井」が始発のえちぜん鉄道は、街なかの電車という印象でした。乗り降りするお客さんの多い市街地の駅を過ぎて数駅行くと、急にぽつりぽつりと住宅がまばらな風景に変わります。雪山の景色を楽しんだり、アテンダントの女性の手が空いておられる時に少しお話をしたりして車中での時間を楽しむこともできます。
取材の初日に乗ったのが夕方ということもあって、乗客の大半が学校帰りの学生でした。えちぜん鉄道が市民にとって欠かせない生活路線だということを感じました。乗客はたくさんいるし、なぜこの鉄道が10年前に廃線になったのか不思議に思うくらいでした。しかし、この“乗客”に復活と存続の秘けつがあったのです。
「希都菜のギモン?」~なぜ復活できたの?~
経営不振と2度の正面衝突事故で廃線した路線をどうやって復活させたのか、えちぜん鉄道再開に尽力された山岸正裕勝山市長と、えちぜん鉄道の見奈美徹(みなみとおる)社長にお話をうかがいました。
えちぜん鉄道の沿線にある勝山市は福井県北部にあり、冬は2メートル近くの雪が積もることもあります。雪の日は、車に乗らない人が大半だそうです。雪国だと、冬は車移動が中心なのだと思っていたのですが、福井県北部では、雪が積もったら電車を利用するのが一般的だそうです。電車がなくなってバスの代替運行があったのですが、雪のため時刻表通りに来ない。学校や仕事に遅刻する人が続出し、自家用車での送迎で学校の前の道は大渋滞、ますます遅刻するようになりました。当時市議会議員だった山岸さんをはじめ住民は、交通は、自家用車、バス、電車がバランスよく分散されないと大渋滞になると気づかれたそうです。ご自身や身近な人が身をもって電車の必要性を感じたことが、鉄道再開をリードしてこられた山岸さんたちの大きな原動力になりました。
「希都菜の発見」~成功の秘訣は維持を意識した再開~
「バトンリレー」
再開を希望する市民運動は、署名を提出するだけではありませんでした。再開したら電車に乗ってどこへ行きたいか、何をしたいかを親子で書いた作文を筒に入れ、沿線をバトンリレーして県庁まで届けました。「鉄道は住民にとって不可欠だ。」という気持ちを具体的に行政に伝えることができました。
県が鉄道設備を買い取り、沿線の市町村へ無償提供しました。そこで第三セクターが再開への取り組みを始めたのですが、地域の商工会議所やサポート団体が一般株主となり、えちぜん鉄道の株のおよそ3割を支えているという珍しい資本形態でもあります。鉄道を再開することが目的になりがちですが、末永く維持するために、利用者の気持ちや関わり方を意識した計画が大事なのだと、山岸市長や見奈美社長のお話から成功の秘けつを知りました。
しかし、再開には予想外の苦労もありました。線路がさびていて電車が電力を得られず不具合が生じたため、沿線住民が集まってさびた線路にサンドペーパーをかけたり、沿線の草取り清掃をしたりしました。お話をうかがって、利用者が参加することで、“自分の鉄道”という意識が芽生えたことが、力になったのだと思いました。
「きょうのキズナ」~合言葉は「乗って残そう」~
えちぜん鉄道の勝山永平寺線を守ろうと「乗って残そう」を合言葉に活動をしているグループがあります。
平成24年、えちぜん鉄道は、再開から10年目を迎えます。電車が走っていることが当たり前になってはいけないと代表の和田高枝さんは考えておられます。電車に乗って出かけるイベントを企画したり、乗車してポイントを貯めると景品を貰えるようにするなど、えちぜん鉄道の社員と一緒に“えちてつサポーターズクラブ”を運営して、電車に乗る“動機作り”をしておられます。「話題を作って伝え続けないと、人は廃線で困ったことを忘れてしまうんです。これでもか、これでもかって伝え続けようと思います。」と和田さんはおっしゃいます。
「えちてつサポーターズクラブ 会員カード」
「えちぜん鉄道サポート団体連絡協議会会長 和田高枝さん」
電車を存続させるためには、鉄道会社が経営を維持できる収入を確保しなければなりません。国や自治体からの補助や赤字補てんはあるものの、経営を支えるのはあくまで“乗客”だと和田さんたちは考えておられます。だから和田さんは、特に用事がなくても、週に一度は電車に乗って、「乗って残そう」を自ら実行しているのだと話して下さいました。サポーターズクラブの会員の中には、電車が踏切を通るたび乗客を数えるという人や、駅を利用するときは乗り降りする人を見るのが習慣という人もいます。
そうした“利用”を意識した住民の支えのおかげで、廃線で離れた利用者は年々増えています。平成22年度の年間利用者数は311万人。再開10年後の目標年間利用者数333万人まであと少しです。徐々に、赤字割合は減ってきています。赤字額は、平成15年度に6億円あまりだったのが、平成22年度には2億円足らずの、およそ3分の1に減っています。「自立した経営ができてこそ、本当の存続だ。」と見奈美社長は、住民の協力に感謝しながら目標を語っておられました。
「希都菜の発見」~安全対策~
2度の正面衝突事故がきっかけで廃線となった経緯があるだけに、えちぜん鉄道では、運転再開後、「電車運行の安全確保」を最重要課題として取り組んできました。国の点検を受け、改修を行なっています。また、安全対策方針を改めてまとめました。JRの運転手を長年経験したベテランを採用して、安全確認や安全運転の指導教育のノウハウも導入しています。
「きょうのナルホド」~予算不足はソフトでカバー~
「新人アテンダント 内藤美佳さん」
えちぜん鉄道は、設備や運行の安全に加えて、乗客の安全サポートにも及んでいます。えちぜん鉄道の乗務員“アテンダント”は、安心して乗ってもらうためのサービスです。アテンダントは、駅ホームと列車の段差があって乗り降りが不自由な高齢者に手を貸したり、荷物が多い高齢者の乗車切符を先に受け取ったりします。アテンダントは、ホームのバリアフリー改装をしたり、ステップのない新しい車両を購入する資金がないために導入したサービスでもあると見奈美社長が教えて下さいました。アテンダントのおかげで、鉄道会社は乗客とのコミュニケーションが密になり、利用者の声を聞いたり、改善点が具体的に見えるメリットもあるのですね。
10年前にえちぜん鉄道が再開した頃に小学生だったという新人アテンダントに会いました。電車通学をしていた頃に、優しくしてもらったことが嬉しくて、自分もアテンダントになりたいと思われたそうです。えちぜん鉄道を守る気持ちは、しっかりと次の世代に受け継がれています。
「希都菜のつぶやき」
えちぜん鉄道では、より多くの乗客に楽しんでもらいたいと、季節ごとにサイクルトレインや永平寺初詣イベント列車などを走らせています。詳しくは「希都菜の部屋」で!
今回の取材協力先
えちぜん鉄道株式会社
えちてつサポーターズクラブ
東藤島地区まちづくり推進協議会


福井出身の同僚や先輩たちが言っていました。えちぜん鉄道が復活して、本当によかっった、助かったと。大行進にも参加したそうです。
投稿者:地行弘憲 | 投稿日時:2012年3月19日(月) 01:30
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