「自転車県の商店街」

交通安全 地域振興

香川県

2012年2月24日(金)

 冬の間しまってあった自転車を出して、自転車で通勤や通学をしたり出かけたりする人が増える季節がすぐそこまで来ています。健康や環境保護のために自転車を利用する人が多くなって、各地で自転車運転のマナー教育や自転車専用通行帯(通称:自転車レーン)の設置などの対策が進められています。しかし、なかなか自転車利用者に安全運転のマナーやルールが浸透しないのが現実です。

 今回取材に行った四国の香川県高松市では、画期的な自転車レーンの設置で、自転車と歩行者の通行区分ができ、自転車と共存するまちづくりを進めています。延べ2,7キロに及ぶ商店街に設置が進む自転車レーンが、全国の自治体が視察に訪れるほど注目を集めています。

「希都菜の感想」

 香川県は、なるほどここは“自転車県”だ、と思うほど自転車に乗っている人が多いことに驚きました。到着したのが早朝で人通りがまばらだったのですが、私が見かけた通行人は100%自転車に乗っていたのです。自転車産業振興会のデータによると、香川県は、一人あたりの自転車保有台数が全国で3番目に多い県なのです。

 高松駅でレンタサイクルをして、取材先の高松丸亀町商店街(以下:丸亀町商店街)に行くと、商店街に来ている半分近くの人が自転車に乗っています。確かに、通りは広く走りやすいです。じっくり観察してみると、自転車利用者に便利な町づくりのポイントが見えてきました。

「希都菜のギモン?」~香川県にはなぜ自転車が多いの?~

 なぜ香川県には自転車が多いのでしょうか。まず地形が平坦であること。農林水産省のウェブページによると、「四国はほとんどが山で埋め尽くされていますが、香川県だけは極端に平野の割合が高い」ので、自転車が走りやすいのです。

 高松丸亀町商店街振興組合理事表の古川康造さんにお話をうかがうと、「昔から自転車は欠かせない交通手段で、高松の子どもが初めて一人で社会参加をするのは、自転車で友達と出かけることなんです。」とおっしゃっていました。また、「田舎の人は、300メートルも歩かない。高齢者の買い物の移動手段は大半がバスよりも自転車なんです。それだけ、自転車が生活にも体にもしみついているんですね。」ともおっしゃっていました。

「希都菜の発見」~自転車レーンの設置場所に秘策あり~

「通りの中央に自転車レーンがある

高松丸亀町商店街」

 では、なぜ丸亀町商店街の自転車レーンがそれほど注目されているのでしょうか。行ってみて一目瞭然でした。これまで私が見てきた自転車レーンは、車道の両端や歩道の中に設置されていました。ところが、丸亀町商店街の自転車レーンは、通路の中央にあるのです。

 その取り組みの中心として活躍しておられるのが古川さんです。古川さんに、自転車レーン設置までのお話をうかがいました。

「高松丸亀町商店街振興組合 理事長 古川康造さん」

 丸亀町商店街の1日の通行量は平日でも約1万6千人で、日本最大級です。しかも、そのうちの半数近くが自転車利用者です。そのため、自転車とお店を出入りする買い物客の接触事故が多く、クレームが絶えませんでした。一時期、商店街への自転車の乗り入れを禁止したこともありました。しかし、香川県は自転車県、自転車で来ることができない商店街はお客さんが激減し、今度は商店からクレームが相次ぎました。そこで、市の区画整理に合わせて、これまでに前例のない“通りの中央”に自転車レーンを設置する案が浮上したのです。

「きょうのキズナ」~自転車受け入れが商店街存続の鍵~

 平成3年のバブル経済の崩壊で、商店街のお店も経営の危機に迫られていたため、一丸となって、お客様を呼び戻す対策を考えていました。お客様が買い物に来やすいように、丸亀町商店街は自転車を受け入れる方法を考えたのです。自転車で来る人も、買い物をする歩行者も安心して通れる商店街にするために自転車レーンを設置することにしました。ちょうど、高松市がまちを一度更地にして、区画整理をするタイミングだったため、商店街の店舗の玄関を後退させ、自転車レーン設置のための道路幅を確保するという異例の拡幅工事が成功したのです。

「以前の道路幅は8m。」

「区画整理で1.5m店の入口を後退し、道路幅を11mにした。」

ポイントは2つ。

  1. 土地の権利はそのまま:拡幅用に提供する店舗前の土地は、持ち主のもののままで、丸亀町商店街が新しく作る株式会社に歩道用として土地を貸すという形をとる。
  2. 集客力UP:拡幅した歩道は私有地なので、休憩用のベンチを置いたり、植物を置いたりしてお客さんが過ごしやすい環境を作る。

  店舗の一部の土地を歩道用に差し出すことで、自転車レーンの道路幅を確保することができ、お客様が来れば商店街存続と店舗の経営維持につながるという理解をすべての店主から得ることができました。商店街の売上は落ち込んでいた頃から3倍近くになり、賑わっていた頃を取り戻しているそうです。

「希都菜の発見」~安全対策“押し歩き”~

 商店街を訪れる自転車と歩行者がぶつかることなく通れるようになったのは良かったのですが、新たな問題が発生しました。「中央のレーンを走る自転車のスピードが速くて怖い。」というクレームが出るようになりました。

  そこで、通行量の多い週末は、商店街の中は自転車を押して歩くように呼びかけを始めました。チラシを配ったり、警備員を雇ったりしましたが、警察の取り締まりではないので、なかなかマナーを守ってもらえません。当時の報告書には、高校生の自転車ルール違反や言うことをきいてくれない女性が目立つなどという記録が残っています。商店街を守りたいと思う古川さんは、次なるアイデアを思いつきます。「自分が注意されたら1対1の攻撃なんですよね。大勢いる中で追いかけて来られて自分だけが注意されたら、『何やねん!?』と反抗的になるのは仕方がない。その時に思いついたのが、物腰のやわらかい高齢者にお願いすることでした。」と古川さんが話して下さいました。

「きょうのキズナ」~高齢者の力~

「声をかけずに、プラカードを持っていると効果がある。」

 自転車の押し歩きを浸透させるために、古川さんは、地域の高齢者生活協同組合の力を借りて、プラカードで“押し歩き”をお願いすることにしました。警備員が注意をしていた時とは違って、プラカードを見て自分から自転車を降りて押す人が増え始めたのです。週末の高齢者のプラカードボランティアは、自転車利用者に声をかけて注意することはほとんどありません。逆に、自分だけがマナーを守っていないことが恥ずかしいと思う自転車利用者の“自発性”に働きかけたのです。

 プラカード作戦は週末に行い、平日は、チラシを配って自転車マナーの呼びかけを行います。自分のおじいちゃんやおばあちゃんの年齢の人が頑張っている姿を見て、商店街を通る人の自転車マナーが徐々に良くなってきていると、高齢者生活協同組合の皆さんは感じておられるそうです。自転車が生活必需品である高松の高齢者が呼びかけることで、自転車と共存するという意識が育まれているのですね。

「きょうのナルホド」~共存に不可欠の駐輪場~

 商店街は、自転車が通りやすいだけでなく、商店街に来てもらうためには駐輪場が不可欠と、いま、駐輪場の増設に取り組んでいます。自転車と共存するためには、道路だけでなく、駐輪スペースもトータルコーディネートしなければならないのです。商店の前の駐輪を減らせば、更に人が歩きやすくなります。現在、立体駐輪場がありますが、それだけでは足りません。商店街を横切る各路地の角に駐輪スペースを設置しようと、高松市と共同で協議会を立ち上げています。公道に駐輪スペースを設置するには、多方面の了解と法的な対策のハードルが高いと古川さんはおっしゃいます。市民にとって利用しやすい自転車の街が完成する日が早く実現することを願います。そして、私もまたいつか、高松市を自転車で巡ってみたいと思います。

今回の取材協力先

高松丸亀町商店街
高松市

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自転車ツーキニスト 平成23年9月23 日

投稿者:平川 希都菜 |  投稿日時:2012年2月24日(金) 00:00

コメント

仕事で高松には何度も行きましたが、このアーケードは本当に長いです。
いろいろな工夫で、商店街がより安全になり、かつ売上が伸びたことには感心させられました。
ほかの商店街にとっても参考になりそうですね。

投稿者:うみ |  投稿日時:2012年2月24日(金) 11:29

自転車専用のスペースを、商店街の中とはいえ、道の真ん中につくるとはスゴイ発想ですね。自転車が吸い込まれていく駐輪場にもビックリしました。うちの近所の商店街もそうなってくれたらいいなぁと思いました。

投稿者:地行弘憲 |  投稿日時:2012年3月19日(月) 01:28

自転車で来てもらうには“駐輪場が必須”という考えも今まで気づかなかった点でした。さすが、自転車県の方は、自転車利用者の気持ちが分かっておられますね。地域の課題は、当事者が参加して取り組むのが効果的なのだなと改めて思いました。

投稿者:希都菜 |  投稿日時:2012年3月26日(月) 18:27

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