「リハビリ難民の再挑戦」

医療

大分県

2010年10月29日(金)

 リハビリテーションを充分に受けられないまま、病院を退院せざるを得ない患者がいます。そんなリハビリ難民に手を差し伸べる施設があります。地域リハビリテーションの拠点として、患者と家族が住み慣れた土地で生活を送れるよう、地域全体で答えを出そうとしている意欲的な取り組みをご紹介します。

 今回は2日間に渡って更新します。

「希都菜の感想」

 リハビリテーションって、手足の麻痺(まひ)や身体機能の回復のことだけをイメージしがちですが、高次脳機能障害や、精神的な障害をリハビリで回復できるとは驚きました。VTRに出ていた大橋さんが、笑顔で、退院に向けてリハビリをされているのが印象的でした。

「希都菜のギモン?」~高次脳機能障害とは?~

 「脳の構造」

 高次脳機能障害が知られるようになったのは10年ほど前からです。高次脳機能障害は、症状を表す言葉で、疾患名ではありません。主に大脳の前頭葉の前部や側頭葉の内側が損傷を受けることで起こるとされています。思考や感情、記憶などを司る部位が受ける損傷で、"高次"脳機能障害と言われています。

 ぱっと見ただけでは障害があるとは思えないことから、"見えない障害"と言われ、周囲からあまり理解されていませんでした。事故や脳卒中などの病気の後、身体的機能の障害に加え、高次脳機能障害を併発している人が実は多いのです。

 例えば、交通事故や脳卒中などの病気で脳に傷害を受けた後、次にあげるような性格や人格の変化があった方、いませんか?

  • 一生懸命しているのに、やる気がないと言われる
  • 新しいことを覚えることが難しくなった
  • 今まで簡単にできていたことができなくなった
  • ささいなことで泣いたり怒ったりしてしまう

これらは、一見認知症の症状と似ているので、間違われることもしばしばあります。

 しかし、大きな違いのポイントが2つあります。認知症は、全般的に脳のはたらきが衰えてくるので、記憶や動作を含め、全般的に衰えるのですが、一方、高次脳機能障害は、傷害された脳の部分が司る機能だけが影響をうけるため、ある特定のことだけができなかったり苦手になったりします。もうひとつのポイントは、高次脳機能障害は進行しないと言われていることです。認知症はシンプルに表現すると脳の老化なので、病状が徐々に進行するのですが、高次脳機能障害は事故や病気をきっかけにおこるもので、リハビリをすれば、徐々にですが回復を期待できます。

「希都菜のギモン?」~高次脳機能障害の障害ってどんな障害?~

 ひとくちに高次脳機能障害と言っても、脳のどこが傷害されるかによって、症状は多種多様です。リハビリテーション専門医・橋本圭司さんの著書『高次脳機能障害』、渡邉修さんの著書『高次脳機能障害と家族のケア』を参考に、代表的なものをいくつかご紹介します。

  • 注意障害:すぐ飽きる、気が散る、新聞を取りにいったついでに窓を開けるなど〇〇のついでに・・・ということができない。
  • 記憶障害:約束の時間を忘れる、何度も同じ質問をするなど。
  • 遂行機能障害:家事や仕事の流れ全体を把握して行うことができない。例えば、登山にゆくから、靴は山歩き用にして、脱ぎ着がしやすい服を何枚か用意、など総合的な準備ができない。
  • 失行:ものの使い方がわからない。例えば、歯ブラシで髪をとかしてしまう、ハサミはものを切る道具だとは理解できるけれど、どのように使って切るかがわからないなど。
  • 失語:思っていることが話せない、物の名前が出てこないなど。
  • 反側空間無視:見えているのに、片側だけ(左が多い)、物や人の存在を無視する。自分の左手側に置いてある料理を食べない、消しゴムが見えているのに探してしまうなど。
  • 行動と感情の障害:怒りっぽい、イライラ、やる気がない、引きこもり、過剰なこだわりなど。

これらが組み合わさって出てくるので、診断が非常に難しいのです。事故や病気後の患者の様子が急に変わってしまったというご家族は、一度医療機関に相談してみるとよいかもしれません。

「希都菜のギモン?」~高次脳機能障害は治るの?~

 高次脳機能障害のリハビリは、低下した能力をもとに戻すのではなく、日常生活が送れるように能力を補うことを目的に行う必要があります。障害が完全に治ることは難しく、付き合っていく方法を身につけるのです。

 病気が治ったので、会社に勤めだしたけれど、どうしても周囲とのコミュニケーションが上手くいかず、会社を辞めざるを得なくなったという人がいます。この時の問題点は2つ。患者自身が自分の障害に気づいていない、理解できない、認めないということと、周囲が高次脳機能障害について知らないということです。社会福祉法人農協共済別府リハビリテーションセンターは、そこに着目して、患者の社会復帰後の生活を見据えたリハビリのプログラムを組んでいます。

「施設内 ドライビングサポートセンター」

「施設内に作られた玄関口の段差」

「片まひリハビリ用左右対称キッチン」

「希都菜の発見」~具体的な目標を立ててリハビリをする~

 リハビリは、努力をしてもなかなか劇的な回復や効果が見えにくいことが多いのですが、別府リハビリテーションセンターでは、患者自身が目標を決めることで、回復の実感を得ることに成功しています。入所している多くの方が約1年以内という短期間でリハビリを終え、9割以上の方が社会復帰をして退院されるのです。

 別府リハビリテーションセンターの看護師・芝尾與志美さんのお話によると、同じ運動でも、"回復したら友達と旅行に行きたい"とか、"以前のように家族に料理を作ってあげたい"とか、"元々勤めていた会社に復帰したい"など、具体的な目標を持って行うと、効果が全然違うそうです。

 次回は、社会復帰に向けた地域の連携についてご紹介します。

今回の取材協力先

社会福祉法人 農協共済別府リハビリテーションセンター TEL:0977-67-1711

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「リハビリ難民の再挑戦」(後半) 2010年10月30日

 

 

 

投稿者:平川 希都菜 |  投稿日時:2010年10月29日(金) 00:00

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