「コリジョンコース」

交通安全

北海道

2010年12月17日(金)

 平成21年の北海道の事故発生件数は19,503件にのぼり、死亡者数は218人。都道府県別でワースト2です。道路幅も広く、交通量も都心ほど多くない北海道で、なぜ交通事故が多いのでしょうか?そこには、広大な田園地帯ならではの道路の特徴と、人体の不思議が重なることでひき起こす危険のある“コリジョンコース現象”が大きく関係していました。

「希都菜の感想」

 白昼に見通しの良い交差点で事故なんて、よそ見していたか、居眠りしていたかでしょう、と思っていたのですが、今回取材をして、その科学的根拠に驚きました。交通事故の加害者が、車に気づかなかったとか、車が突然現れたと供述しているとニュースでよく見ますが、責任逃れとは言い切れない、私たちが知らない現象があるのだと知りました。

 私の知り合いが、数年前に北海道で交通事故を起こしました。田んぼの真ん中で、出合い頭の衝突、田んぼに車ごと落ちたと話していました。幸いどちらも大きなけがはなく済んだそうですが、まさに、コリジョンコース現象による田園型交通事故だったのだと思います。

「きょうのナルホド!」?コリジョンコース現象?

「道路が直角に交わる見通しのよい交差点」

 コリジョンコース現象とは--2台の車がある1点(仮想衝突点)に向かって等速直線運動をしているとき、視界がどんなに良好でも、お互いの存在を認識できなくなる現象のこと。つまり、相手のクルマが見えているはずなのに、見えなくなってしまう現象だ--(『事故はなぜ起こる!?』石橋宏典著より)

「等速で進むと、目の錯覚で

接近していることが認識できずに衝突」

この著書によると、コリジョンコース現象は3つの条件が重なった時に起こるといいます。
??2本の道路が直角に交わっている
??信号のない交差点である
??見通しのよい交差点である
田園地帯や、区画整理された造成地など、碁盤の目になっている道路に危険が潜んでいるのです。見通しがよいのに、なぜ?と思いますよね。こうした条件が重なった場所で、かつ、油断と人体の不思議によって、田園型交通事故が起こるのです。

「希都菜のギモン?」?見えているけど認識していないの??

「周辺視野」 と 「中心視野」

 視野が広い、狭いなどとよく言いますが、そもそも視野とはどの範囲をさすのでしょうか?視野とは、ある1点を見たときに目に映る範囲をいいます。正常な人では、片目で160度、両目で200度くらいまでと言われています。その視野の中に、“中心視野”と“周辺視野”があります。色や形まで明確に認識できる中心視野は、各専門機関によって見解は異なりますが、左右の目でそれぞれ25度?35度くらいまでと言われています。それを外れる部分を“周辺視野”といいます。周辺視野に映るものは、見えてはいるけれども、中心視野と比べて見えているものが明確に認識されません。

 コリジョンコース現象には、この“周辺視野”が大きく関係しています。周辺視野の範囲は一定ではなく、車を運転している状態では、速度が速くなるほど周辺視野が広くなる、つまり、明確に対象物の色や形、距離や速度をとらえることができにくくなるのです。

 また、人の目は、動いているものの方が見つけやすく、周辺視野内でも相手の車が動いていれば認識できます。以前に、セーフティドライビング教室の取材をしたときに、アイマークカメラ(人がどこを見ているかを表示できる特殊なカメラ)を使って運転者がどこを見ているかを記録したことがあります。運転者は、歩いている人や信号が変わったことなど、“変化”に反応していました。しかし、景色が変わらない田園風景の中を一定の速度で走っていると、今回のビデオの例のように、常にその車が周辺視野内にある限り、だんだん近づいていることが明確に認識できないのです。(『事故はなぜ起こる!?』より)

 人間の体の仕組みって、不思議であり、知らないと重大な目の錯覚による事故につながる落とし穴でもあるのですね。

「きょうのナルホド!」?自分でできる事故防止の対策?

 北海道大学公共政策学連携研究部の萩原亨教授のアドバイスでは、見通しの良いまっすぐな道路では、時々左右確認をしましょう、とのことでした。つまり、首を左右に向けることで、中心視野に周囲の状況が入るようにして見るのです。

注)これは、決してわき見を勧めているわけではありません。周囲に注意を払う時に、ほんの一瞬、中心視野で見るようにすると明確に距離や対象物を認識できるということです。

「きょうのキズナ」?声かけ運動?

 私は時々レンタカーを利用するのですが、「安全運転でお願いします」というメッセージを出発時にいただきます。もちろん、レンタカーを利用する人はみんな安全運転で行こうと思っているのですが、取材に協力して下さった帯広のレンタカー店のように、新聞記事を張り出したり、どういう場所で事故が起こりやすいか、という地図を見せて教えてくれるなど、記憶に残るエピソードを少し話して下さると、より注意喚起になるなと思いました。

 運転をしている途中に、「ここがコリジョンコース現象が起こる交差点だね!」と話題にもできるし、「右見て左見て!」とか「減速だよ?!」など、会話を通した注意につなげることができます。

 北海道に長年住んでいる知り合いも、ドライブ好きの車出くんも、コリジョンコース現象や田園型交通事故のことを知りませんでした。もちろん、私もです。この事故は、北海道の十勝地方で目立った事故だったため、別名「十勝型交通事故」とも呼ばれますが、北海道に限ったことではありません。財団法人日本自動車研究所のデータによると、見通しのよい交差点での出合い頭の事故で、年間およそ400人が命を落としていると推計されます。平成21年の交通事故死亡者数は4,914人。1割近くの人がこのタイプの事故で亡くなっています。今回取材をして、この“コリジョンコース現象”の存在を広く知らせることで、交通事故をさらに減らすことができるのではないかと思いました。

 このサイトをご覧下さったみなさん、北海道に旅行に行くお知り合いに、“コリジョンコース現象”と“田園型交通事故”について、ぜひ教えてあげて下さい。

今回の取材協力先

ニッポンレンタカー北海道株式会社 帯広ブロック 帯広空港前営業所 TEL: 0155-64-5065
北海道釧路方面帯広警察署
北海道大学公共政策学連携研究部

「ちいきのきずな」関連記事

セーフティドライビング」 2010年11月9日

投稿者:平川 希都菜 |  投稿日時:2010年12月17日(金) 00:00

コメント

この紹介記事を読んで少しほっとしました。このような現象のあることを紹介していただきましてありがとうございます。

投稿者:加州碧水 |  投稿日時:2013年9月23日(月) 14:52

コメントを投稿する

コメントを投稿するにはログインが必要です。
会員登録がまだの方は こちら からお進みください。